耳より!SPかわら版

医療現場に求められるリーダー像

第3回:メンタルヘルスへの影響

"第3回:メンタルヘルスへの影響 チームがチームとして機能するには、各メンバーの心身、特にメンタルヘルスが安定していることが欠かせません。あまりにも当然のことなので日頃意識することもないかもしれません。しかし、患者から怒りの感情をぶつけられやすい医療現場で働く方々は、相手の怒りに巻き込まれてしまうことが少なくありません。そこで今回は、怒りの感情がメンタルヘルスに及ぼす影響について考えます。 怒りには「高いところから低いところへ流れる」という性質があります。つまり、「立場の強い人のところから立場の弱い人のところへ流れる」ということです。リーダー(医師)からメンバー(看護師)へ、患者から看護師へ、時によっては患者から医師へという場合もあるでしょう。 怒りに対する耐性が弱いと、怒りをぶつけられるストレスが日常的に続いた場合、メンタル疾患になりやすいことが知られています。例えば、何らかの過度なストレス(ここでは、他人から怒りをぶつけられるストレス)が引き金になってうつ病が生じることもあるでしょう。うつ病になりやすいタイプには、まじめ、責任感が強い、人あたりが良い、周囲の評価が高い、といった共通点が挙げられます。このタイプの人は責任感が強いがために、他人から怒りをぶつけられた時に「怒らせてしまった自分が悪い」「自分で何とかしなければ」と考えてしまいがちです。でも、すべてを抱えて頑張りすぎたり、自分の感情を抑えることがストレスとなって増えていったりすれば、どこかの時点で心のバランスが崩れてしまいます。 感情トラブル回避術 また、イライラを放置すれば心身、特に自律神経に異常を生じやすくなります。呼吸が荒くなったり、手に汗をたくさんかいたり、睡眠が浅くなったりします。特に睡眠を十分に取れないと、結果的に朝起きることが辛くなり、睡眠不足によって仕事上でのケアレスミスが多々起きてしまうといった負の循環に陥ります。 そこで、患者からの暴言・怒りに対する耐性を高めるために、次のような考え方を取り入れてみましょう。病院と患者それぞれにとって 1)権利 2)義務 3)欲求 の内のどれなのかを意識して考える方法です。 耐性が低い人は、これらの観点を上手に分けることができず、すべて一緒にして考えてしまいがちです。病院側の義務ではないことにもかかわらず、「患者さんが希望しているから」と何とか対応しようとしたり、必要以上に謝ったり気持ちに寄り添おうとして下手に出たりすることで、心にダメージを受けてしまいます。 病院が対応しなければならないことは、病院の義務だけです。患者の欲求に応えることが病院の義務ではありません。もちろん、患者が望むことにはできるだけ対応する方針を掲げている病院もあるでしょう。その場合は、病院としての義務がどこまでの範囲なのかを明確にし、メンバー全員と共有しておくことが必要です。 また、患者は「自分にはこの病院で診察を受ける権利がある!」というような形で権利を主張しますが、権利は義務を果たした上で生じるものです。病院からの要求は断るにもかかわらず診察を求める、例えば診察時間外にこのような主張をしたり、予約の順番を守らずに特別扱いしてもらうことを求めたりすることは権利ではありません。患者の欲求です。 「権利」、「義務」、「欲求」のどれに該当するのか、譲るものは何か、譲る必要がないものは何かを区別し、基準を決めてチーム内で共有する。この基準が明確であれば理不尽な怒りをぶつけられても、過度のストレスを抱えることは大幅に減るでしょう。 "

2016-04-19

"一般社団法人日本アンガーマネジメント協会認定 アンガーマネジメントシニアファシリテーター 須田愛子"