耳より!SPかわら版

感情によるトラブル回避術

第11回:べきログ:怒りにくい頭へ 〜その2〜

"べきログ:怒りにくい頭へ 〜その2〜 働き方の多様化は医療現場においても例外ではありません。 そうなると働き方一つにしても人によっていろいろな考え方が出てきます。 パート看護師の時給が、勤続年数に応じて昇給する仕組みを採用している病院では、本人のやる気や病院への貢献度は賃金に反映されません。 言い換えれば、向上心が高くて自主的に様々な業務をこなそうと積極的に取り組んでいるパート看護師であっても、そうでない看護師であっても、勤続年数が同じであれば賃金は変わらないのです。 このような職場では、積極的に働きたいと頑張っている人に対して、「そこまで頑張らなくてもいいんじゃない。言われた仕事をきちんとこなせば、お給料はもらえるのだから」と言う人もいると思われます。 求められている以上の仕事をすることにやりがいを感じて頑張る人と、ほどほどの仕事で満足する人が、同じ職場で働くとなれば考え方の相違でお互いイライラするでしょう。 人は誰しも、コアビリーフとも呼ばれる「価値観の辞書」のようなもの、自分が長年信じている「べき」という言葉で表現されるものを持っています。 期待、希望、欲求、願望、そうあって当たり前、当然そうするということを表す時に使う言葉が「べき」です。 上記の事例で言えば、積極的な看護師は、「仕事を通じて成長するべき」「医師や患者様の期待に応えるべき」「お給料以上の仕事をすべき」という「べき」を持っているかもしれません。 一方、ほどほどの仕事をよしとする看護師には、「与えられた業務をこなすべき」「損をするべきではない」「お給料に見合わない責任を負うべきではない」という「べき」があるのかもしれません。 人は自分の持っている「べき」が守られなかった時や裏切られた時に、怒りが生じる・発動するのです。 感情トラブル回避術 この「べき」を書き出して記録(ログ)に残す、「べきログ」というテクニックをご紹介します。< これは長期にわたって怒りにくい頭をつくる・習慣を身につける体質改善のためのテクニックのうちの1つで、自分がよく思ったり使ったりする「べき」を書き出す、記録に残すことで簡易的に自分のコアビリーフを知るものです。 書き出した「べき」を後で振り返ることで、自分がどのような価値観を持っているのか、客観的に知ることができるようになります。 フォーマットは特にありません。 自分の口から「〜すべき」「こうあるべき」といった言葉が出たら、それをメモするのでも良いでしょう。 「べき」を書いたら、自分と同じ「べき」を身近な人たち(職場の同僚、上司、家族等)が持っているかどうか考えてみてください。 上記の例のように、両極端な「べき」が職場内で存在することもあるでしょう。 人によっては、どちらの「べき」についてもそれほど強く感じることはないかもしれません。 日頃から身近な他人の言動や行動を観察して「べき」を書き出せば、その人のコアビリーフを知る手がかりともなります。 留意してほしいのは、「べき」を持っている人にとっては、その「べき」はすべて正解だということです。 どちらかが正しく、どちらかが間違っているということではありません。 ただし、病院・チーム・部署といった組織の中で、業務を遂行する上で優先しなければならないことがあれば、個人的な価値観を引っ込める必要も出てくるでしょう。 それぞれの組織の中で、業務に携わるすべての人が守る事柄・方法・ルールが明確であることが、組織内での怒り・イライラの発生を防ぐ土台となります。 無用な怒りを生じさせないためにも、関係者全員で「この病院ではこうあるべき」「ここのチームではこうするべき」といった決まり事を共有するようにしておくと良いですね。 "

2015-06-16

"社団法人日本アンガーマネジメント協会認定 アンガーマネジメントシニアファシリテーター 須田愛子"